訓練、有事に関わらず、戦闘機は特別な任務を除いて、単独で飛行することは無く、複数機で行動します。どんなに優れたパイロットでも単独飛行では、目視できる範囲や、組織的な攻撃を行う敵機への対応に限界があることが大きな理由だと思います。各パイロットは、状況に応じて編隊は形を変え、時には単独飛行に移行して、任務を遂行します。そして、離れた各機は、まだどこかで再集合しなければなりません。
ブルーインパルスの課目の中で、代表的なのが”レター8“ですね。
4機のダイヤモンド編隊から、4番機が離脱し、残りの3機のデルタ編隊と逆方向に360°旋回します。旋回開始点に戻った後は、先行する3機を追うように逆方向に旋回し、再度、4機のダイヤモンド編隊に戻ります。これも、見方によっては、敵機を欺くために編隊が右旋回しているように見せかけて、逆方向に旋回した4番機が敵機の背後を突く動きのようにも見えます。また、“チャンジオーバーターン”も、5機編隊が一気に分散して、再集合する形にも見えますね。
でも、ブルーインパルスのアクロフライトの中で、もっとも大変なジョインナップは何でしょうか。
ブルーインパルスはアクロショウの間、航空祭会場からは見えないところでジョインナップを繰り返し行っています。俗に、プロシージャーと呼ばれていますが、次の課目に備えて、離れていた機体がジョインナップするとともに、編隊の隊形を構成し直しています。一番簡単な例では、“スタークロス”で星を描いた5機は、四方八方に散開しますが、次の課目であるタッククロスに向けて、5番機と6番機が直ちにジョインナップします。続いてタッククロスの演技中に、1番機から4番機が再びジョインナップして、ローリングコンバットピッチを行います。
編隊とソロが交互に繰り広げられるブルーインパルスでは、このプロシージャーのタイミングが合わないと、課目間の間延びします。もし、遅れた機体があって隊形が整わない場合は、アクロ課目をキャンセルしなければならないかもしれません。事前に、航空祭基地毎の地形に合わせて緻密に計算された飛行コースが設定され、その通りに正確にフライとすることで、アクロバット飛行が成立しています。海外では、アフターバーナーが装着されている戦闘機を使用しているチームがあります。アフターバーナーを用いれば、強引に遅れを取り戻すことが可能ですが、現在のT-4にはありません。また、常に最大出力に近い領域を使用していて、遅れを取り戻す余力はありません。それでも、常に私達に安定したフライトを披露してくれるパイロットの技量の高さに脱帽してしまいます。
<Studio-T>