#5#6の交差シーンを撮りたい!

|  撮影TIPS  |
 ブルーインパルスの写真を撮る中で、最も難しいのはオポジットコンティニュアスロールとタッククロスの#5と#6の交差シーンです。あの、会場をあっと言わせるシーンを何とか写真に納めたいと思ってみたものの、中々これが難しい。ここでは、理論上というか、数値上というか、いつかはばっちり納めたい人のための予備知識をまとめてみました。

 ●ソロ機の速度
 400ノット(時速約800km)で交差する#5と#6。片側#5にカメラを合わせるとして、#6の相対速度は時速1600kmとなります。秒速にすると1600000m÷60分÷60秒=444.44m/秒(それぞれの速度は222.22m/秒)。大変なスピードで交差しているアクロバット課目に、今更ながら驚いてしまいます。
 ●カメラの連写性能
 Imachanの使っているプロ仕様機は8.5コマ/秒の連写性能があります。この交差を撮るために買ったといっても過言ではありません。それでも、1コマあたりに進む距離は、444.44m/秒÷8.5コマ/秒=52.3m/コマとなります。T-4の全長(13m)3機分が入る大きさにファインダーを合わせるとしたら、ファインダーから見える幅は39m。つまり、連写のコマ間で、ファインダー幅の1.34倍(52.3m÷39m=1.34)移動してしまい、はみ出します。何も考えずに連写性能に頼るとしたら、12コマ/秒の性能が必要になってしまうことになります(444.44m/秒÷12コマ/秒=37m/コマで、39m以内に納まる)。全長2機分がファインダーの幅だったら、18コマ/秒必要で、かなり高速な連写が必要になってしまいます。いまのところ、そのようなカメラは民生品では見たことがありません。
 ●野球のバッティングのように撮る
 このタイミングを捉えるためには、連写性能に頼らず、1シャッターで決めなければなりません。
 オポジットコンティニュアスロールの場合、右目でのぞいたファインダーで右から来る#5にカメラを合わせ追い続けます。左目は、開けたまま左から来る#6が視野に入ってくるのを待ち、その瞬間にシャッターを押すと良いでしょう。って、これが一瞬の出来事なので中々できないのです。野球のバッティングか、それ以上に難しい要素がありそうです。
 ●撮影するポジションが大事
 この一瞬を捉えるために、より良いポジショニングを取ることが肝要です。
 まず左右の交差のタイミングを合わせるためには、左目に#6が入りやすい位置に立つ必要があります。交差点より右にいた方が、少しでも向かってくる角度になる#6を捉えやすいからです。交差点より左にいたとしたら、自分の頭の左斜め後ろから#6が飛び出してくることになります。これではタイミングは合わせられません。立ち位置はショウセンターよりも右。会場の真ん中より右寄りです。
 次に、縦位置の合わせ方です。#5と#6は、滑走路の両端を基準にして交差しています。その幅約50m。手前が300フィートで奥が400フィードの高度で、会場から見て重なるように高度差をつけて交差します。写真は、2005年の松島航空祭で、最前列から10mくらいに後ろに下がった位置で撮りました。レンズは400mm(35mm換算520mm)でした。奥側が少し下に来ていることから、もっと後ろ、会場の前後の真ん中くらいが一番ぴったり重なると思われます。上下差のある二つの機体に合わせようとすると、左右のタイミングだけでなく、上下まで合わせようと迷いが生じやすくなります。まるでフォークボールを打つような形になりますから、なかなかクリーンヒットできません。ただし、後ろに下がると被写体が小さくなります。より長い望遠レンズが必要かもしれません。
 いずれにしても皆さん、より良いポジショニングで、交差シーンを狙ってください。
 ●タッククロスは交差が逆
 またタッククロスは手前の#5が左から飛んでくるために、右から来る奥の#6に合わせるか、左目でファインダーをのぞいて、左打ちのような、まるでスイッチングヒッターのような器用な切り替えをしなければなりません。
 ●シャッター速度
 編隊課目の全機にピントがあたるように、シャッター速度をゆっくり目にして絞りを大きくする(被写界深度を上げる)必要はありません。シャッター速度はなるべく上げて、片側1機をぶれないように撮りましょう。ISO感度を上げてでも、1/1000秒くらいはほしいところです。
 ●お手本
 本サイトの「黒澤英介写真館」の黒澤カメラマンのオポジットコンティニュアスロールの写真は、交差シーンを捉えた究極の一枚です。ポジのノートリミングの写真です。デジタルのように35mm換算で×1.5倍のような望遠効果はありませんから、後ろに下がって上下差がないポジションで撮るためには、より大きなレンズが必要になります。ポジですからISO感度100、シャッター速度も1/1000秒まで上げていないでしょう。それでもこの大きさでぴったりピントも構図も納まっています。究極のブルーインパルス写真。デジタルのようにISO感度上げてシャッター速度を上げたり、手ぶれ補正レンズに頼ったり、後処理のレタッチソフトでシャープネス掛けたり、そんなごまかしのまったくない究極の写真。見れば見るほど、考えれば考えるほど、寝込みたくなる一枚です!
http://www.blueimpulsefan.net/kurosawa/kurosawa10.html
 さあ、いよいよ岩国FSDからアクロが始まります。皆さん、究極の一枚を目指して頑張ってください。

<Imachan>