■はじめに
 サポーター's DVDエクストラ「Complete Mission FULL MANEUVER」との提携コンテンツです。ブルーインパルスの課目解説については、様々な書籍や他のサイトでも掲載されてきました。ただ、それらの書籍はある程度の部数で絶版になってしまうことや、またネット上の解説で十分なものもなかなかなく、この度、1区分をコクピット映像と編隊長の解説で紹介したComplete Mission FULL MANEUVERのリリースに伴い、新たにブルーインパルスに出会われたファンの方達のためにもと思い、やっとブルーインパルスファンネットでも課目の解説を載せることを決心しました。ここではブルーインパルスによる空撮写真とナレーション原稿を含めて解説していきます。
 ブルーインパルスのアクロバット飛行は、四機の編隊と二機のソロ機を中心に構成されていますが、一機、二機、三機、四機、五機、六機の機数構成で繰り広げられる高度な設計がなされたアクロバット飛行です。一機の次は五機、二機の次は四機など、その組み立て方にもご注目ください。
 ブルーエンジェルスやサンダーバーズに代表される戦闘機を使った六機のアメリカンアクロ、練習機を多数機使ったヨーロピアンアクロ、そのどちらとも違う日本式曲技飛行がT-4ブルーインパルスの確立したアクロバット飛行です。それは、国産ジェット練習機T-4の性能と機動性を余すことなく見せてくれています。

ダイヤモンドテイクオフ&ダーティターン
(#1, #2, #3, #4)

『まずは四機の編隊離陸をご覧いただきましょう。
 離陸するとすぐに、4番機は1番機の真後ろに移動して、菱型のダイアモンドと呼ばれる隊形を作ります。
 さあ離陸滑走が始まりました。
 4番機が絶妙なタイミングでダイアモンド隊形へと移行する動きにご注目下さい。
 このあと四機は、再度会場正面から着陸灯を点灯させて皆様へご挨拶に参ります。
 会場正面をご覧下さい。先ほど離陸した四機が、純白のスモークを曳きながら進入して参ります。
 まずは着陸灯を点灯させてのご挨拶、ダイアモンドダーティーローパスです』

 最初の離陸課目です。離陸してすぐに#1〜#4が「へ」の字のフィンガーチップ隊形から菱形のダイヤモンド隊形に隊形変換します。#4が#1の真後ろにもぐりこむように移動します。風向きによって#4が#2の後ろにつくか#3の後ろにつくかは編隊長が判断して指示します。脚を下ろしたまま旋回し高度を上げた編隊はスモークをONして会場に向って舞い戻ってきます。滑走路真上でスモークを切り課目を終了します。脚を下げフラップを下げたままのこの課目は、離陸から低速で密集隊形を維持しており、低速故にスモークが太く逞しく曳かれます。
ローアングルキューバン (#5)

『続いて5番機、6番機の離陸です。さて、どのような離陸を見せてくれるでしょうか。
 5番機は、超低空飛行で加速し、急上昇に移ります。そのまま宙返りを半分行って、皆様の前に帰って参ります』

 #5の離陸です。機体が浮上して脚を上げた#5は、機体が自然に浮き上がるのを抑えるように超低高度を維持し、機速が乗るとフラップを上げてスモークONしてほぼ垂直に上昇していきます。上昇後、離陸してきた方向に反り返り、なだらかに横転しながら滑走を始めた#6の上を抜けていきます。
ロールオンテイクオフ (#6)

『スモークを出した6番機は、浮き上がるとすぐに車輪とフラップを下げたままで、右に大きく横転を行います。
 5番機、6番機によるローアングルキューバンとロールオンテイクオフでした』

 #6の離陸です。脚とフラップを下げたまま急上昇し、右横転のバレルロールを打ちます。バレルロールとは樽の外側をなぞる様に横転していく空中戦での飛び方で、これを離陸直後に行えるT−4の性能が示されています。
 ローアングルキューバンとロールオンテイクオフを同時にフォーメーションで行うこともあります。この場合、#5は#6に離陸後の初速を合わせてゆっくり飛び始めるため、その後パワーを十分に引き出せる条件が必要になります。その条件とは長い滑走路であったり、またパワーが出る寒い時期であったりします。

ファンブレイク (#1, #2, #3, #4)

『次はファンブレイクです。
 ファンブレイクは、四機のT-4の最短距離が約一メートルという最も密集したダイアモンド隊形を保って、会場左手後方から皆様の前を通過します。
 進入して参りました。会場左手方向にご注目下さい。
 それぞれのパイロットの、優れたテクニックとお互いの信頼がなければ、この様な密集した隊形は組めません。
 四機によりますファンブレイクでした』

 #1から#4が、主翼が触れ合うほどの密集したダイヤモンド隊形で会場を囲むように背中を見せて駆け抜けます。#4は菱形が会場からきれいに見えるように#1の真後ろから少し左の#2側に機軸をずらして飛んでいます。
 ファンブレイクが終わると、その間天候偵察していた#5がウェザーを報告し、#1(編隊長)が区分を決定します。
4ポイントロール (#5)

『続いては、会場左手から5番機による4ポイントロールです。
 4ポイントロールでは、一回ひねりを九十度ずつ止めながら、四つに区切ってお見せします。
 会場左手方向から進入して参りました。
 5番機がシャープで切れのあるロールをお見せします。
 5番機によります4ポイントロールでした』

 ロールには主に二種類があり、機体の傾きを決めるエルロンを使ったエルロンロールとバレルロールがあります。エルロンは主翼先端側の後縁にある可動翼で、操縦桿の左右で動きます。エルロンロールは機軸を真っ直ぐに保って機体を横転させますが、4ポイントロールでは、横転を90度ずつに区切って、小気味よく1/4回転ずつ横転します。T-4の背中、側面、腹を丁寧に見せてくれる課目です。

チェンジオーバーターン (#1, #2, #3, #4, #6)

『次は、会場右手方向からチェンジオーバーターンです。
 縦一列の隊形で進入した五機が、皆様の目の前で、三百六十度の水平旋回をお見せします。
 旋回の開始と同時に、左右に大きく開いた傘型の隊形に変わり、会場を一周している間に、更に密集した傘型へと隊形を変化させます。
 進入して参りました。会場右手方向にご注目下さい。
 縦一列の隊形から、大きな傘型隊形へのスピーディーな隊形変換を行います。
 ここから徐々に密集隊形に変化します。
 各機のスモークの間隔が、徐々にせまくなっていくのがご覧いただけますでしょうか。
 五機によるチェンジオーバーターンでした』

 縦一列のトレイル隊形から右に大きく捻って大きな傘型隊形に隊形変換します。トレイルの四番目から右に倒した傘型隊形の一番上に跳ね上がる#4が最も激しい機動をします。右に捻って大きな360度旋回に入った傘型隊形は、会場から最も遠い反対側で間隔を狭めていき、会場正面に戻ったときに最も密集隊形になってスモークをOFFします。激しくトレイルから傘型に一気に隊形変換する様子と、同じ傘型隊形ながらゆっくりと間隔を狭める隊形変換が見られます。
インバーテッド&コンティニュアスロール (#5)

『次は、正確な背面飛行と連続横転をお見せしましょう。
 左手から5番機のインバーテッド&コンティニアスロールです。
 会場左手方向をご覧下さい。
 背面飛行中のパイロットは、コクピット内で宙ずりとなりながら正確に航空機をコントロールします。
 すかさず急上昇を開始した5番機は、宙返りをして会場正面に戻り、皆様に連続三回ひねりをお見せします。
 5番機によりますインバーテッド&コンティニアスロールでした』

 #5が背面飛行とコンティニュアスロールを見せる課目です。左からの進入で背面飛行を見せた#5は、水平に機体を戻し、急上昇して外側に宙返りし、進入してきた方向に向って水平に戻りコンティニュアスロールをします。コンティニュアスロールとはエルロンロールを三回続けて行う連続横転です。
 また、背面飛行を多用する#5のヘルメットは、5の文字が逆さまに描かれています。

レインフォール (#1, #2, #3, #4, #6)

『次は、スモークの描く航跡の美しさをお楽しみ下さい。
 五機のT-4が大空から、滝のように降り注ぎ、雄大に散開する、その名もレインフォールです。
 会場正面にご注目下さい。
 五機のT-4が進入して参りました。宙返りを開始した五機編隊は、機首が真下を向いた瞬間に、それぞれの方向に散開します。
 さあ開き始めました。美しく広がるスモークにご注目下さい。
 雄大な滝の流れをイメージしたレインフォールでした』

 会場正面の高高度から真っ逆さまに降下して左右に開く課目です。実際には正面奥からこちらに向って五機の傘型隊形がループを行います。そのループの頂点からスモークを曳き始め、真下を向いたあたりでブレイクして会場いっぱいに均等に開いていきます。スモークは会場上空に達する前にOFFされます。スカートの裾をいっぱいに開いたような絵を描く、最初の描き物課目です。
バーティカルクライムロール (#5)

『次は、会場左手方向から、5番機の垂直急上昇、バーティカルクライムロールです。
 会場左手方向をご覧下さい。
 時速約八百キロメートルの高速で進入する5番機は、会場正面で横転を繰り返しながら急上昇し、一気に地上約三千メートルまで駆け上がります。
 5番機によるバーティカルクライムロールでした』

 レインフォールから会場後方に抜けた各機を眼で追いかけていると、すぐに左から#5が進入してきてしまいます。#5は会場正面で思い切り垂直上昇し、三回転半の横転をしながらゴマ粒になるほどの高度まで一気に駆け上がります。
 2区分ではこの垂直上昇時の横転が二回半になります。
スローロール (#6)

『再び会場左手方向をご覧下さい。6番機がゆっくりとした横転をご覧入れます。
 一見、簡単そうに見える横転ですが、実は、優れた空中感覚と高度な操縦テクニックが必要とされます。
 6番機によりますスローロールでした』

 エルロンロールをゆっくりと20秒掛けて行う#6のソロ課目です。一気にエルロンロールの横転を行う場合に比べ、操縦者は高度を下げることなく直進を保ちながら横転の傾きを少しずつ進めていきます。直進方向のエネルギーをコントロールしながら実施するこの課目は、あらゆる舵を駆使して行う高度な課目となっています。

チェンジオーバーループ (#1, #2, #3, #4)

『次は、会場正面上空でのチェンジオーバーループです。
 会場後方から、縦一列の隊形で進入した四機が、大きな宙返りを開始すると同時にダイアモンドの形に隊形を変え、宙返りの後半で横転を行います。
 会場後方から進入して参りました。
 さあ、ダイアモンド隊形に隊形が変わります。こののち宙返りの後半、機首が真下を向いたとき右に大きく横転を行います。
 四機によるチェンジオーバーループでした』

 会場後方から進入する課目です。ランプ地区に入る前から四機のトレイル隊形でスモークをONした編隊は、会場上空を同じ高度で通過します。会場正面に抜けて高度を上げるとき、初めて課目がスタートします。高度を上げてループ機動に入ったトレイル編隊は、隊形をダイヤモンドに変換し、ループの頂点で編隊を捻って会場右方向へと降下してループを終了します。チェンジオーバーターンが水平旋回を基調に隊形変換を見せるのに対し、この課目はループを基調に隊形変換を見せています。
ハーフスローロール (#5, #6)

『次は会場右手方向から5番機、6番機によりますハーフスローロールです。
 二機のT-4が、一本の芯でつながれているように、ゆっくりと背面飛行に移行する、難易度の高い課目です。
 さあ、会場右手から進入して参りました。5番機と6番機の息のあった動きにご注目下さい。
 5番機と6番機によるハーフスローロールでした』

 ゆっくりとスローロールする#5の周りを、#6が#5の横軸上にぴったり並ぶように、まるで扇を開くかのように機体をひるがえすのがハーフスローロールです。エルロンロールでもなくバレルロールでもない#6の機動は、T-4との機動性を駆使した難しい課目となっており、方向舵の舵角を広げたブルーインパルス仕様のT-4でしかできない課目と言われています。

レター8 (#1, #2, #3, #4)

『次は、会場正面上空でのレターエイトです。
 レターエイトとは、その名の通り横向きに「8の字」を描く課目です。進入してきた四機編隊は、二つに分かれて旋回を開始し、それぞれが水平に円を描き、二つの円を組み合わせて8の字を完成させます。
 さあ、会場正面をご覧下さい。レターエイトの開始です。二つに分かれたT-4がそれぞれ円を描き始めました。
 左に分かれた4番機は、右に分かれた他の三機が円を描き終わるまでに見事再集合できるでしょうか。
 4番機は、早くも円を描き終えました。ここから懸命に、編隊を追いかけます。
 見事に再集合を終えました。
 四機によるレターエイトでした』

 会場正面に8の字を横に水平に描きます。会場後方から四機のダイヤモンド隊形で進入し、会場正面上空に達してスモークをONにすると#4が左に編隊離脱します。#1から#3は右に2Gの大きな旋回をし、左にハイGで旋回した#4は離脱した始点まで戻るとスモークをOFFにし、一気に#1編隊の2Gターンの内側をショートカットして追いかけます。#1編隊が正面に戻るころに#4は機速をうまく合わせて低速の#1の後ろへ空中集合し、始点で四機がスモークOFFして8の字を描き終わります。8の字を描きながら編隊離脱と空中集合を課目内で見せる課目です。
オポジットコンティニュアスロール (#5, #6)

『次は、5番機,6番機によるオポジットコンティニアスロールです。
 会場右手から5番機、左手から6番機が進入し、それぞれが連続横転を行いながら会場正面で交差します。
 さあ、進入して参りました。それぞれが時速約八百キロメートルの速さで同時連続横転しながら交差します。
 5番機、6番機によるオポジットコンティニュアスロールでした』

 #5と#6が左右からコンティニュアスロールをしながら交差を行う課目です。レター8が終わった頃、#5と#6は会場後方の交差点の真後ろあたりで左右にブレイクします。そのまま左右後方を回りこんで、会場正面で交差します。片側の機速は時速800kmもあり、相対速度は1600kmにもなります。#5と#6は滑走路の両縁の上をトレースしており、十分な間隔を取っていますが、それでもこの高速度のために大迫力の交差となります。

4シップインバート (#1, #2, #3, #4)

『次は会場右手方向から、4シップインバートです。
 これは、密集したダイアモンド隊形で、会場上空を約百メートルの低高度で全機背面飛行のまま精密な編隊飛行を行うものです。
 背面飛行では、操縦桿の操作が逆になるため、高度な操縦テクニックが必要とされます。
 進入して参りました。会場右手方向にご注目下さい。
 さあ、1、4番機が、続いて2、3番機が背面飛行となりました。
 4機、全機の背面飛行、4シップインバートでした』

 最初に#1と#4が背面飛行に入り、それを確認して#2と#3が背面飛行に入る四機のダイヤモンド隊形での背面飛行課目です。通常のダイヤモンド隊形と違い、#4は#1の後ろ下ではなく、後ろの上に位置して進入してきます。このため#4の座席は上から覗き込むために高めにセットされています。
 横風が強い場合には#1が水平飛行のまま残り三機が背面になる3シップインバート。#1と#4が背面に入った後なんらかの理由で#2と#3が背面に入れない場合はそのまま水平飛行で隊形を保持するダブルファーベルという課目になります。T-4ブルーインパルスでは元々ダブルファーベルでスタートし、3シップインバートを経て現在の4シップインバートに順次移行してきました。

バーティカルキューピッド (#5, #6, #4)

『さあ、皆さん。次はブルーインパルスから、皆様の幸せと平和を願って日本一大きなハートマークを描きます。
 会場正面上空をご覧下さい。5番機、6番機がハートを描いていきます。
 ハートが描き終わると、すぐさま4番機が矢を貫いていきます。
 5番機、6番機、そして4番機によりますキューピッドでした』

 ハートに矢を突き刺す描き物課目です。真横に並んだ#5と#6が正面から会場に向って進入に垂直上昇後左右にブレイクしてスモークを引き始めます。宙返りを300度ほど終了すると真っ直ぐに斜め降下し、すれ違ったところでスモークをOFFします。これでハートの出来上がりです。4シップインバートからブレイクして正面左奥の低高度域に回りこんだ#4は、ハートが完成したことを確認して、下から斜めに矢を突き刺します。

ラインアブレストロール (#1, #2, #3)

『続いて会場正面方向から、1、2、3番機によるラインアブレストロールです。
 ラインアブレストロールは、三機のT-4が、横一列の隊形を組んで大きく横転します。
 進入して参りました。会場正面右手方向にご注目下さい。
 まるで、三機のT-4が、一本の芯でつながっているように、正確に隊形を維持して、横転していく様子をご覧下さい。
 1、2、3番機によるラインアブレストロールでした』

 会場上空でハートが描かれている間、左奥を大きく回りこんだ#1から#3は、会場正面奥から会場に向って大きなバレルロールを打ちます。このときの隊形は横一列のアブレスト隊形で、地上の列線で並んでいるのと同じ間隔をぴったり保ってバレルロールしてきます。#2は真横の#1のみを見て、#3は#1とその向こうの#2を見てぴったり横一列でアブレスト隊形を維持する難易度の高い編隊課目です。
360°&ループ (#5)

『次は、会場左手から5番機による三百六十度水平旋回と、それに続く宙返りスリーシックスティ&ループです。
 進入して参りました。会場左手方向にご注目下さい。
 直径約九百メートルの円を描くのに要する時間は約二十秒、この間パイロットには六倍もの重力加速度がかかっており、呼吸をするのも困難な中で、正確に航空機をコントロールします。
 ここから、一気に千メートルの上空まで駆け上がり宙返りを行います。
 5番機によるスリーシックスティ&ループでした』

 #5が旋回とループを連続して行うソロ課目です。1区分も中盤を過ぎ、緊張と集中力の維持を求められる中、増槽をつけないクリーン形態でのT-4の強度制限である6.66Gギリギリまで使った操縦者と機体の極限を引き出す課目です。

ワイドトゥーデルタループ (#1, #2, #3, #4, #6)

『続いて会場後方から、ワイドトゥーデルタループです。
 この課目は、五機のT-4が、幅の広い傘型隊形で進入し、宙返りを行っている間に、小さな傘型隊形へ形を変化させるものです。
 五機は後方から皆様の頭上を通過し、会場正面で宙返りを開始いたします。
 ここから、徐々に間隔を詰め、より密集した傘型隊形へと形を変えていきます。
 五本のスモークがバランスよく収束していく美しい様子をご覧下さい。
 五機によるワイドトゥーデルタループでした』

 会場後方から五機のワイドな傘型隊形で進入し、会場上空を同高度で通過した後、ループを始めて課目に入ります。ループの頂点に向ってゆっくりとワイド隊形を縮めていき、ループの終了下点で最も密集した傘型隊形への移行が完了します。ループしながらのゆっくりとした隊形変換は、#2と#3、#4と#6が均等に中央に寄せなければならず、ループ機動とあいまってスロットル制御の難しい課目です。

デルタロール (#1, #2, #3, #4, #5, #6)

『さて、ここからは六機全機揃って行う課目をご覧頂きましょう。ただいま会場上空を通過した編隊は、再び会場正面から進入して参ります。
 この間、六機は、引き続き傘型隊形を保ったままであり、パイロットには高度な編隊飛行技術と、高い集中力が要求されます。
 まずは会場正面から、デルタロールです。
 デルタロールとは、三角形の隊形を保ったまま、大きな横転を行うものです。
 進入して参りました。会場左手をご覧下さい。六機によるデルタロールの始まりです。
 一枚の板のようにきれいな隊形を保ったまま横転を行う様子をお楽しみ下さい。
 六機によるデルタロールでした』

 交互にいろいろな機数の組み合わせで課目が組み立てられてきた1区分は、ここから六機全機の課目に突入します。終盤への山場となります。デルタロールは、六機のデルタ隊形という基本隊形で会場左奥から右手前に向けてバレルロールを行います。会場客席真上ではアクロ課目そのものは行わないという規定から、#1編隊長は難しいヘディングを決めて編隊を対角線上に通過させなければなりません。また僚機もそれぞれ異なる機動でデルタ隊形の三角形の面を維持しなければなりません。バレルロールの外側の機体は機体を浮き上がらせるように動き、内側の機体は機体を沈めるように動いていきます。#1が樽の外側をなぞるようにバレルロールする間、僚機はさらに複雑な動きをして隊形を保っているのです。

デルタループ (#1, #2, #3, #4, #5, #6)

『次は、六機のT-4がデルタ隊形を保ったまま宙返りを行う、デルタループです。
 進入して参りました。会場右手をご覧下さい。
 六機のT-4により描かれる真っ白なスモークの帯が、直径約二千メートルの雄大な円を描いていきます。
 六機によるデルタループでした』

 デルタロールから会場右後方に抜けたデルタ編隊は、左に折り返し、会場右手から長いスモークを曳いて進入し、会場正面でループを行います。東京タワーの三倍はあろうかという雄大なループは、ブルーインパルスを象徴する編隊課目となっています。

ボントンロール (#1, #2, #3, #4, #5, #6)

『続いて、六機全ての、一斉横転、ボントンロールです。
   パイロット全員の意志が通い合って、初めて一糸乱れぬタイミングとなる難易度の高い課目です。
 六機は、スモークが切れるタイミングに合わせて、全機が一斉に横転を行います。
 さあ見事きれいに決まるでしょうか。
 レディー、ナウ!
 見事きれいに決まりました。六機全てによるボントンロールでした』

 左に抜けたデルタ編隊は、右に折り返し、少し山なりになるような機動を取りながら、スモークをONして会場正面に向って斜めに進入してきます。一度ヘディングが決まると、隊形はワイドなデルタ隊形にゆっくりと開き、会場正面の滑走路真上でスモークをOFFした直後に一斉にエルロンロールします。
 このタイミングを合わせるために、プリブリーフィングというフライト前の打合せで、必ずスモークのON/OFFやエルロンロールする手順を編隊長の号令の下にタイミング合わせしています。
バーティカルキューバン8 (#5)

『5番機はここから会場正面に回り込み、垂直に8の字を描いていきます。
 まずは、インメルマンターンと呼ばれる上向きの宙返りを二回行います。頂点付近では高度約二千五百メートルに達し、速度は失速ぎりぎりになります。
 こののち、スプリットSと呼ばれる下向きの宙返りを同じように二回行い、きれいな8の字を描きます。
 T-4の優れた機動性と正確な操縦テクニックのご披露、5番機によるバーティカルキューバンエイトでした』

 ボントンロールから会場右後方に抜けると、#5が編隊から離脱して左旋回し、会場正面奥に到達すると上昇しながら半宙返りを行うインメルマンターンを行います。一回目のインメルマンターンが終わるとすぐに反横転して水平に姿勢を戻し更にもう一回インメルマンターンを行います。頂点からは下降しながらの半宙返りであるスプリットSを二回行い、8の字が縦に描かれます。インメルマンターンを二回連続で行えるパワーをT-4が備えていることを証明する課目です。2区分では横向きの∞の字になります。

スタークロス (#1, #2, #3, #4, #6)

『それではここで、スモークの描く線の美しさをお楽しみ頂きましょう。
 会場後方から進入した五機は、会場正面で急上昇し、五つの方向に散開しながら、大きな花を描きます。
 会場正面をご覧下さい。
 五つの方向に散開し、大きな花を描いた各航空機は、この後、それぞれの方向から会場上空に再度戻って参ります。
 このときに、会場上空に新しい絵をもう一つ描きます。
 引き続き会場上空にご注目下さい。もう一つの絵が、徐々に姿を現してきました。これが、大空に雄大な星を描く、ブルーインパルスのオリジナル課目、スタークロスです』

 会場後方から傘型隊形で進入した五機は、会場正面で上昇を行い、真上を向いたところで、ループを描く#1から離散するように五方向へとブレイクします。そのスモークの軌跡は百合の花を咲かせたような上向き空中開花となります。その後スモークを切って機体を水平に戻し、十分な距離まで五方向に離散し、スプリットSという空中戦で使う下向き半宙返りの方向転換を行い、スプリットSが終わって中心を向いたところで一斉に右に15度進路を変えてスモークをONします。各機の進行方向には他機の曳いたスモークの始点があり、そこまでスモークを曳き終わると空に大きな星が描かれます。ブルーインパルスの代表的な描き物課目です。2区分では高度を下げ、星を小さく描きます。
タッククロスT(#5, #6)

『さて、早いもので、本日の演技も終盤へと差し掛かって参りました。次は、会場正面から5番機と6番機によるタッククロスです。
 二機は揃って背面飛行に入り、その姿勢から旋回を開始し、ぎりぎりの間隔ですれ違います。
 会場正面をご覧下さい。ソロの二機が背面飛行で進入して参ります。
 すれ違った二機は、それぞれ滑走路上で急上昇に移り、横転しながら地上約千五百メートルまで一気に駆け上がります。
 左右に急上昇していった二機は、間髪を入れず急降下に移り、再び、会場正面に戻って参ります。そして高度百メートルの低高度を背面飛行ですれ違います。
 5番機、6番機によるタッククロスでした』

 正面から横並びでスモークONした#5と#6が背面飛行に入り、会場に真っ直ぐ向ってきます。270度のエルロンロールを内側に決めた後、機体が交差するように内側に切り返すクロスターンを行い、滑走路上で左右に離散し、上昇して一旦スモークをOFFします。上昇しながら二回転半の横転を行い、宙返りしながら再度スモークONして会場に戻ってきます。滑走路上では背面飛行で左右からの交差をします。オポジットコンティニュアスロールと違う交差をする二回目の交差課目です。

ローリングコンバットピッチ (#1, #2, #3, #4)

『いよいよ、四機編隊最後の課目となってしまいました。
 次は会場左手から四機の編隊による編隊解散、ローリングコンバットピッチです。
 ローリングコンバットピッチは、ブルーインパルス創設以来受け継がれている伝統の課目です。
 四機のT-4が、エシェロンと呼ばれる斜め一列の隊形で進入し、上昇横転しながら編隊を解散し、四本の真っ白な半円を描いていきます。
 進入して参りました。会場左手方向にご注目下さい。
 本日の最後を締めくくる伝統の課目、ローリングコンバットピッチの始まりです。
 4機はこのまま着陸態勢に入ります』

 斜めのエシュロン隊形で左から滑走路に並行で進入した#1から#4が、高度を少し上げながら会場側に270度のエルロンロールをして一機ずつブレイクする編隊解散課目です。通常のコンバットピッチまたはピッチアウトと呼ばれる編隊解散は、90度までバンクして(傾いて)編隊から一機ずつ離散するものですが、ローリングコンバットピッチは、270度ロールして編隊の下をもぐりこんで反対側に離散する機動を取ります。このもぐりこむ機動のために、通常は同高度で進入してくるコンバットピッチですが、ゆるく高度を上げながら編隊を解散しています。
コークスクリュー (#5, #6)

『続いて、5番機、6番機が会場正面から進入してまいります。
 背面飛行をしている5番機の周りを、6番機が、螺旋を描いていきます。
 進入して参りました。会場正面にご注目下さい。
 T-4ブルーインパルスのオリジナル課目、コークスクリューが最後を飾ります。
 この後二機は、前の四機に続いて着陸態勢に入ります』

 会場正面からタッククロスのように横並びで進入してきた#5と#6は、#5が背面に入ると#6がその外側を螺旋を描いて会場に向ってきます。#6が三回転半し終わると会場右手へと二機で旋回して、編隊解散します。
 これでブルーインパルスの1区分が終了です。